読むのも書くのも暇な人

考えていることや読んだものについて書いていきます。

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

思考実験

カズオ・イシグロの新作「クララをお日さま」を読んだ。厳しい格差が存在する未来で、人間の子どもに寄り添って成長を助ける人工知能のロボット、クララが主人公の物語だ。 クララには臭覚や痛覚、感情がないのだけれど、愛という概念を必死に理解しようとし…

会えない従妹

一度も会ったことのない従姉がいる。正確な年齢はわからない。彼女の存在を知ったのは、思春期ごろ。私に顔がよく似ていると叔母が言っていたらしい。いろいろと事情があり、会うことはできない。 私が会うことのできた従兄弟姉妹は、父方母方合わせて8人い…

本心

www.tokyo-np.co.jp 平野啓一郎『本心』(文藝春秋、2021)を読んだ。授乳をしている母と子のカバー絵画に惹かれて手に取った。母が乳を飲む子を優しく見守っているようにも、うまく吸えない子に戸惑っているようにも、はたまた乳首を噛まれた痛みで子の頭を…

妖魚とタイマン

鏑木清方が1920年に発表した「妖魚」という絵がある。昭和のキャバレー王福富太郎が所蔵していた作品で、頻繁に公開されるものではないという。 年明けに雑誌で知ってからはいてもたってもいられず、東京都国立近代美術館の「妖しい絵展」と東京ステーション…

伴侶選びの観点

bookclub.kodansha.co.jp 溝口敦氏の洞察がすごい。相手の発言、仕草などほんの少しの情報からどんな人物かを見抜いていく。好き嫌いはっきり、頭の回転早い、腕っぷしも強い、仕事はできる。こんな人と一緒に働いてたらそりゃ好きになっちゃうよね。 ヤクザ…

すべてがFeになる

近所のくねくね曲がった道の途中に、猫のひたいほどの古道具屋がある。安くて渋い陶器が並んでいて、不意打ちに美術品が座っている。壁には絵。ひとつ一つ眺めてから、茶碗か醤油皿か小鉢を買って、毎日使う。たまの密かな楽しみだ。 昨日、古道具屋の中で、…

変なおじさん

小学校2、3年生の頃だった。母が夜に家を空ける用事ができ、父方の祖母が私たち姉妹の面倒をみにきてくれた。祖母は昭和一桁生まれだったはずだ。田舎の古い家からほぼ出たことがないであろうおばあちゃんが家にいて、不思議な気持ちがした。 祖母が作った…

今日

わたしの父は雪国の生まれだ。貧しい農家の次男坊。 母は中部地方の山奥で生まれた。耕地が少ない山あいの寒村だ。 5の両親は、西の外れにある島の離島で生まれた。父はさらにその離島の生まれで、ご先祖様はもっと小さい島から来たらしい。 どっちのルーツ…

ダイエット

とある平日の昼下がり、4と老舗の喫茶店に入った。二つ並んだボックス席の右側には、向かい合ってお茶をする50代と20代の男女。お互いに敬語。だけど、男性が妙に甘えた口調で、女性の方には緊張感がある。流行りのあの活動か。ここから1ミリでも離れたい…

水晶と陶器のあいだ

去年だったか、食事をしていてふと「タイトルも画家の名前も思い出せないんだけど、すごく好きな絵がある」と、5に話したことがある。5は私の話を聞きながらひょいひょいとスマホをいじって、「これでしょ」と画面に表示させた。エドワード・ホッパーの「…

身もふたもない

落ち込みついでに(まだ落ち込んでいる! しつこい私)、掃除をしながら自分のくせについて考えて結論がでる。 私は、自分にとって面白いことが大好きだ(そりゃみんなそうだろうけど)。人、場所、表現方法、考え方、概念、、、、なんでも。小さなことから…

いい占い

占いをするのもされるのも好きだ。プロに占ってもらうときは、信頼する人が推薦してくれた人で、かつ、自分もピンときた人に頼む。だから、いつも観てもらってよかったな〜と思う。 一番最後に占ってもらったのは、半年前のこと。占い師さんのお部屋も、その…

お手本はゴリラ

とっても落ち込むことがあったので、昔読んでスクラップしていた記事をずりずり引きずり出して読む。 2018年6月14日(木)の日経夕刊、当時京都大学の総長だった山極寿一氏が登場した「私のリーダー論」だ。ゴリラ研究の第一人者である山極氏。彼が理想のリ…

お会いしたことはないけれど、田嶋陽子先生の声が好きだ。 さっぱりしているけれど温かくて、どこかいつもおもしろがっているような調子。英文学・女性学研究者だけれど、シャンソンも歌う人だからか。 お召し物の色も、いつもきっぱりしていてすてきだ。 そ…

中止にする権限

日経新聞に、読者や有識者の意見を紹介する私見宅見というコーナーがある。 6月9日のこちらで、立教大学名誉教授(民法)の角紀代恵氏が「五輪中止、日本に義務なし」という原稿を寄せている。 「『五輪を中止にする権限は日本にはなく、国際オリンピック委…

能率って

実家にいるころは、何か食べているか寝ているか読んでいるかしかしていなかったので、母によく「生産性の高いことをしなさい!」と怒鳴られていた。 だから、生身の人間に対して「生産性がある/ない」という発言を聞くと 胸がしくしく痛んでしょうがない。 …

シェイクスピアに接近

昨日の夕刊で、ちくま文庫から松岡和子訳の「シェイクスピア全集」が 出たことを知る。 戯曲を読むのが苦手なのでシェイクスピアは敬遠していたのだけれど、 「読み比べしてみては?」と『リチャード三世』を翻訳者4人分貸してくれた方がおり、その中でも松…

つまずいてばっかり

毎日毎日あらゆることにひっかかっては モヤモヤしたり、ぼんやりしたりしている。 モデルさんだってショーで転ぶことはあるんだから、 つまずいてばっかりの人生でもしかたないという気持ちで 見聞きしたこと、考えたことを書いていこうと思います。