読むのも書くのも暇な人

考えていることや読んだものについて書いていきます。

会えない従妹

 一度も会ったことのない従姉がいる。正確な年齢はわからない。彼女の存在を知ったのは、思春期ごろ。私に顔がよく似ていると叔母が言っていたらしい。いろいろと事情があり、会うことはできない。

 

 私が会うことのできた従兄弟姉妹は、父方母方合わせて8人いる。そんなにいるのに、自分は誰とも似ていないな、と思っていた。会えない従姉が私と似ているなら、気が合うんじゃないかな。一緒に育つことができたらよかったのに、と残念に感じた。

 

 たまに彼女が住んでいたという町の名前を聞くと、私と同じ顔だけれど私じゃない女の子が生活している姿が頭に浮かんだ。嫌なことがあると、自分の生活も記憶もぜんぶ消し去って、知らないうちに従姉にすり替わって生きているのをイメージした。それでもやっぱり嫌なことはあるだろうと予感がして、その妄想は打ち切るのだけど。

 

 その従姉に子どもがいることを知ったのは、つい数年前だ。その従姉の子がある競技で才能を発揮していて、取材された映像がいくつかインターネットに上がっていることを私の両親が知らせてきた。その従姉と私に血の繋がりがあるとは限らないけれど・・・と断りを入れてきたけれど、その子は伯父に、祖父母にそっくりだった。

 

 きっとこの画面の外には従姉がいて、心配そうに子を見守っているんだろう。練習の送り迎えをしたり、子を慰めたり励ましたり、競技の道具の世話をしてやったり。自分の時間はあるのかな。健康でありますように。

 

 たまにふと、その子の情報を検索してみると、どんどん大きくなってびっくりする。そして、従姉の息遣いを感じられるような気がする。私たちは、会えないけれど、会っている。