読むのも書くのも暇な人

考えていることや読んだものについて書いていきます。

ダイエット

 とある平日の昼下がり、4と老舗の喫茶店に入った。二つ並んだボックス席の右側には、向かい合ってお茶をする50代と20代の男女。お互いに敬語。だけど、男性が妙に甘えた口調で、女性の方には緊張感がある。流行りのあの活動か。ここから1ミリでも離れたいと願う親の心とは裏腹に、左側のボックス席に座りたいと強硬に主張する4。

 

 こういう時の4はしつこいので、渋々席に着く。すると、隣の女性が座っている背中合わせのシートに私と並んで座りたいと4が言い募る。

「やだよ」

「なんで? 理由ある? 4は今日はこっちに座りたい気分なんだよ。座れないなら理由を教えてよ」

6歳の娘に、隣がpapa-katsuっぽいから少しでも距離を取りたいと言っても分かってもらえない上に聞こえてしまいそうなので、仕方なく言う通りにする。

 

 お願いだから金額交渉とかしないでくれ(4が聞いたら説明が面倒)・・・と祈るような気持ちでオーダーしたものが来るのを待つ。幸い、4は買い与えていたおもちゃに夢中。私は、4をぼうっと見守りながら背後の会話を聞くともなしに聞いてしまう。

 

 男性は、しきりと自分の体重を気にしていて、「いついつは何キロだったのに、ストレスで太っちゃったんです」「仕事とか結婚とかコロナのストレスで・・・」と自分の体重年表を細かく女性に報告していた。そして、5分に1回くらい「痩せた方がいいと思います? 筋トレした方がいいですよね?」と女性に確認する。女性は笑顔で受け流しているようだが、私だったら「知らねえよ」という顔しかできなくて一瞬で食いっぱぐれそうだ。

 

 大体の会話から察するに、企業の専務くらいのポジションで、小金はありそうだ。ここでこんな不毛な会話をしている暇があったら、ジムで小一時間でも汗を流してくればいいのに。そしたら痩せて、お金を使わずにモテるかもしれないのに。

 

 と思ってハッと気づく。私だって、忙しくてお金があって食べたいものもたくさんあったら、わざわざジムに行って体型をキープするよりも、お金を払って相手を得る方が簡単だと思ってしまうかもしれない。すると、永遠にダイエットはできない。人は多分、素敵な自分でありたいと願って、努力する姿そのものが魅力的なのに。。。

 

 同じお金を払うなら(決めつけてごめんなさい)、私はすべてを笑って肯定してくれる人より、きっちり仕事をしてくれる人がいいな。サボっていたジムにちゃんと行って、トレーナーさんに冷静に指摘してもらおう。大切なことを気づかせてくれてありがとう。出されたものを飲むように食べ、4を急き立てて店を後にした。