トーマの心臓
萩尾望都『トーマの心臓』(小学館文庫)を読んだ。BLの悲しい話と思い込んでいたけれど、愛と生と死についての話で、希望に満ちたラストだった。そして、これは絶対にドイツでなければ地理的にも歴史的にも成り立たなかった話だなと思った。
主人公がたくさんいる不思議な感じなのだけれど、わたしはユリスモールに自分を重ねてしまった。出生について身内に否定されていて、髪の毛の色にコンプレックスがある。その弱い部分につけ込まれて、辛い事件が起こる。
わたしにも、ユーリのように脅されて本心に反することを言わされそうになったことがあった。結果的に口にはしなかったけれど、そういうことをする人に吸い寄せられ、好感を持ってもらおうとした自分をひどく恥じた。それを引きずっている自分が嫌だったけれど、あれはやっぱり許しがたいことだったのだとわかる。
大人になってから萩尾望都を読めて本当に良かった。