読むのも書くのも暇な人

考えていることや読んだものについて書いていきます。

わたしのムヌスー

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 自分へのお祝いにクッキーを買ったのに、いろいろなことを思い出したら記憶のかさぶたが剥がれてしまって落ち込むので、5に話してみた。

 

moderusangakoronda.hatenablog.com

 5は「大学時代なんて貧乏なんだから、そんな高いものを自分に買おうなんて思わないと思うよ。余裕のある時期じゃないとやっぱり買えないよ」と慰めてくれた。そうだよね。仕送りをたくさんもらえるわけじゃないから、バイトもしてたし、食べ盛りだから嗜好品にかけるお金はなかった。それでも、適当に安いものを送ったら母が激怒するから、東京っぽい、都会でしか買えないものを探さないといけなかったんだよね。

 

 そして5は「お母さんは実家に学費とかのお金を援助してもらってたんじゃないの?」と鋭い推理を働かせた。確かに! そうだとすると長年の謎が解ける。大学時代は寮生活やアパート暮らしをしていて、長期休みは実家に帰ってゆっくりしたいと思っていたけれど、母が「N(母の実家がある地方)に行って孝行せよ」と言って許してくれなかった。Nに行ってもリラックスできるはずもないので東京で1人で過ごすのだけれど、さみしくて仕方なかった。年に数回「こんなによくしてもらっているのに、お前はNに何もお礼をしていない!」と荒れ狂って贈り物を強要してくるのも、農産物をたまにもらえるからなのかなと思っていたが、地方の果物の額なんてたかが知れている。そっかー。そうだったのかもしれない。違うかもしれないけれど、これで自分が納得できるのならそうだったことにする。

 

 5と話していて、昔読んだ新聞記事を思い出した。

www.nikkei.com

 5の父が生まれた沖縄の離島のさらに小さな離島には、ユタやムヌスーというシャーマン(宗教的職能者)がいる。この地方の人たちは、具合が悪いともちろん病院に行くのだけれど、同時にユタやムヌスーを訪れて病の原因を聞く。原因はカミサマや死者の怒りに触れたから、とか相談者本人の発言だったり、関係者の恨みの気持ちとなることが多い。ムヌスーは相談者の話をじっくり聞くことで病の原因と結果を一筋の「物語」にまとめる。患う人を病の物語の主役にすることで、安心させて行動を起こす手助けをするのだそうだ。

 

 ムヌスー役を5がしてくれたことで、20年来の悲しさが減って楽になった。前世はムヌスーだったのかな。占いもカウンセリングも、きっとこういうことなんだろうと思う。

 

 わたしの住む国のプリンセスが結婚される。お二人ともたくさんの傷を持ったと思う。お互いがお互いのよきムヌスーとして、静かで幸せな日々を過ごされますように。