読むのも書くのも暇な人

考えていることや読んだものについて書いていきます。

いばらの道

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 阿刀田高のエッセイを読んでいたら「(自分は小説を楽しみとして読んでいるが)この世に小説を好まない人が20%くらいはいるだろう」という文章が出てきてなるほどと思う。

 

 小説好きの分布図というのはきっと詳細な研究があると思うので、正確なデータが知りたい方はそちらを調べてもらうとして、あくまでも私の肌感覚で予測すると、

①小説を好まなくてまったく読まない人:2割

②そこにあって気が向いたらたまに目を通すが、自分から買っては読まない人:3割

③月に1〜3冊読む人:3〜4割

④毎日読む人:1〜2割

という感じなのかなと思う。念のためネットで見られるデータをざっと見てみたけれど、大きく違ってはいなかった。多分。

 

 私が今までやっていたライターの仕事は、②がほとんどで、③が少しかぶるくらいの層に向けて書くことが多かったと思う。個人的な読書傾向としては絶対毎日小説を読むわけではないがほぼ④なので、小説を書くとしたら④の人に向けて書くことになる。厳しく細い、いばらの道である。みんなが口々に「儲からない」というわけである。

 

 私の母は、生涯で一冊も本を読み通せたことがないと思う。ライターの仕事をしていた時は、そういう人でもわかるようなテーマ設定、表現を心がけていたけれど、これからは違うんだな。

 

 そういえば私が小学生のとき、新聞広告を見て映画の試写会の懸賞ハガキを出すのにハマったことがあった。けっこう当たるのだけれど、小学生が行けないような時間帯にやるので母にあげていた。母は落ち着きがないので映画を観るのは好きではなさそうだったが、無料だし私の行きたい気持ちを代わりに叶えてあげたいと思ったのか何回か行っていた。

 

 おもしろかったのは、トゥルー・ロマンスが当たった時で、「血がいっぱい出てよくわからなかった、気持ち悪かった」とものすごく困惑して帰ってきた。5がタランティーノ好きだったので、私は結婚してから観るようになったが、タランティーノ脚本のアクション映画なんて母の価値観と対極にあるものだから、不可解だし居心地悪くて仕方なかっただろうなと想像すると、気の毒なんだけど笑ってしまう。