共通点
夕暮れ色に染まる表参道の交差点で、女が信号待ちをしていた。隣に立つ人の顔をふと見上げると、三年前に別れた男だった。女は懐かしさが抑えきれずに声をかけた。
「久しぶりだね。元気だった?」
男は目をまるく見開いたあと、女の目をじっと見て答えた。
「元気だったよ。もうすぐ自分の会社、立ち上げようと思って」
「へえ、すごいね。わたしもね、結婚するんだ。彼ね、経営者なの」
女は、しきりにネックレスをいじっている。
「そっか、じゃあご主人になる人と、どこかで会うかもな」
信号が青になり、二人は並んで歩きだした。
「あなたはぜんぜん変わらないね。元気そうで安心した」
「ほんとだな。きみも幸せになってくれよ」
横断歩道を渡りきり、二人は右と左に別れた。そして同時に呟いた。
「嘘をついたときの癖って、変わらないんだな」