なまはげ

　かわいそうな人を見ると、いたたまれなくなってしまう。罪悪感が強くなって、自分だけが楽をしているような気になって、何かできるまで落ち着かない。

　昔、ある人にその気持ちを話したら、「人をむやみに憐れむことは失礼なことだ」と言われた。おなかのあたりがモヤモヤとするだけで納得はできなかったのだけれど、だんだん腑に落ちてきたように思う。

　「かわいそうな人だ」と私が勝手に認定してつきあいが始まると、私のおせっかいがうっとうしくて相手が離れていくか、相手の甘えがエスカレートして私が苦しくなる、の2パターンだった気がする。どちらにしても対等な関係ではないから、失礼なことだったと今ならわかる。

　人を憐れんだとき、私はなぜあんなに燃えたのだろうか。本当はいつも私の中に「かわいそうな人」がいて、助けてほしかったからだ。自分で自分を助ける方法がわからないから、他人の中に自分を投影して気持ちを紛らわしていたのだと思う。

　母もいつも、「かわいそうな人」のために奔走していた。本当に助けるべきは自分だったのに。常にもっと「かわいそうな人」はいないかと、なまはげみたいにギラギラしていた。不幸な人、障害を持っている人に関わりたがった。怖かった。

　私はなまはげにはなりたくない。ヘンでもいいから自分でいたい。かわいそうな時もあるし、そうじゃない時もある。なまはげになりそうな時は、ここに戻ってこようと思う。