異国の元嫁

昔むかし、小さな村があった

女はみんな男にどこからか連れてこられ

子どもを産んで家族の世話をして畑仕事もした

女の暮らしは大変だったけれど

女たちはよりそいあって生きていたのでなんとかなった

女の中に異国から来た嫁がいた

目も肌も髪も全部の色が違っていて目立った

いじめる者もいたが女たちが味方した

異国の嫁は朗らかな女だったから

みんな彼女が好きだった

ある時から異国の嫁の元気がなくなった

夫がよりつかなくなってたまにいると怒鳴っている

そのうち夫が異国の嫁と子どもたちを国に返してしまった

すぐに夫は腹の膨らんだ若い女を連れて来た

異国の嫁は異国の元嫁になってしまった

女たちは泣いた

泣いて泣いて泣いて涙が枯れたら水を飲んでまた泣いた

畑も夫の世話もほっぽり出して泣いた

こんなことはよくあること

わかっているから泣いた

女たちがあまりに泣くものだから

涙で村が濁流に飲み込まれた

子どもだけ固く抱きかかえた女たちが団子になると

海に流されていった

波がドンドコドンドコ女の団子を運んでいた

女の団子が陸に打ち上げられた

そこは異国の元嫁の故郷だった

女の団子が解けて異国の元嫁と女たちは抱き合った

三日三晩海辺で酒を飲んで踊り明かした

異国の元嫁はただの女に戻った