読むのも書くのも暇な人

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もぬけ前に

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 朝のラジオ体操の帰り道、セミの幼虫がひっくり返ってバタバタしているのを発見した。4にはもうすぐ一歳になる従弟がいるのだが、「あの子が寝返りできなかった時みたい」と言って小さな木の棒を差し出し、うつ伏せに直してやっていた。

 

 この夏、抜け殻は嫌というほど見たけれど、セミの幼虫は初めて見た。中にまだ身が入っているのが新鮮で、じっと観察してしまう。早速飽きた4はひらひらとどこかへ行ってしまった。

 

 セミは体勢を正されたあと、土の上で微動だにしなくなった。まさか、このまま羽化してしまうのだろうか。いや、確か羽化をするのは暗くなってからだから、それまでにじっとその時を待つのだろうか。

 

 昆虫というのはいかに外敵から身を守って生き延び、子孫を残すか、が肝な気がするのに、人が増える朝に腹を見せてバタバタしているなんて。ちょっと抜けている個体なのかな。そこへ自分が動いていただけなのに私がどこかに行ってしまったと思った4が「3ちゃん、ここにいたの〜?」と走ってきて、幼虫を踏んでしまった。

 

 幼虫は最初と同じ仰向けになって、手足を激しく動かしてから絶命したようだ。4は「死んじゃった?」と聞くと、ウワーンと泣き出した。私は「仕方ないよ」と4の頭をなで、手を握って「帰ろう」と促した。

 

 ミンミンゼミの鳴き声の中に、ツクツクボウシが混じっていることに気づいた4が「夏、もう終わっちゃうの?」とさらに泣く気配を見せた。私は「まだまだ夏はいっぱいあるから大丈夫だよ」と答える。うんざりするほど、一緒にいよう。

 

 写真は、5が地域の土器ワークショップで作ったアート。本体にはドラゴンを貼り付けたので、隣で作っていた小学生たちから羨望の眼差しを受けたとのこと。