読むのも書くのも暇な人

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悪童日記

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 アゴタ・クリストフの『悪童日記』を読み終えた。余韻で脳みそが一日中じーんとしていた。こういうのを名作っていうんだなと思う。

 

 内容は、第二次世界大戦中、双子の男児が大都市から田舎のおばあちゃん家に疎開してくる。だが、おばあちゃんがドケチなので持ち物を売り払われ、母からの仕送りのお金は横取りされ、食べ物を十分にもらえない。そんな中、双子が天才性を発揮し、悪さをも含むあの手この手で生き抜く話。善悪とは何か、非道なことが満ち溢れている時にどう自分を貫くか、尊厳とは、人助けとは、などなど、本質的なテーマがたくさん詰まっていた。寓話的で掌編が集まった作りなので読みやすかった。ラストには衝撃を受けた。もちろん、続きが気になってしかたないので、『ふたりの証拠』『第三の嘘』も注文する。

 

 比喩表現はほとんどないし、ねっとりとした感情描写もない、ドライな文章なのに、心をぶるんぶるん揺さぶられるのはどうしてなんだろう。アゴタ・クリストフはここまで削ぎ落とすのにどれだけ推敲を重ねたのだろう。すごい。本当にすごい。