作中、クリスマスから年明けにかけて重要な事件が起きるので、
年末年始に読むのにふさわしかった。
あまりにも苦しく、切ない物語で、
若い頃に手にとったとしても受け入れられなかったと思う。
読み終わってから、
「ジェルミがこの厄災から逃れるチャンスはなかったか」と思って
もう一度頭から読んでみたけれど、
サンドラの息子である以上、万が一グレッグと出会わなくても
似たようなことが起きてしまうのだろう。
『血の轍』(押見修造)の母もそうだけれど、このタイプの親は、
絶対に子を幸せにしてはならない、
どんな手を使ってでも自分の「愛する」以外の愛に触れさせないと
本能レベルでプログラムされているので、
そこから出ようとする子に全身全霊で呪いをかけるからだ。
すばらしいフィクションというのは、一度読む人を
疑似的に呪いにかけてしまって閉じ込めるんだけど、
必ず最後に解放する仕掛けを準備してあって、そこを通り抜けることで
前と違った何かをもたらしてくれる。
それはドキュメンタリーやノンフィクションには到底かなわない。
以前は事実のほうが強くて、価値があると思っていたけれど、
全然種類が違うんだ、すごいことなんだなと思う。