読むのも書くのも暇な人

考えていることや読んだものについて書いていきます。

割りこみ客

 なじみの小さなお店で接客してもらっていたら、見知らぬ老人がぐいっと背後に入りこんできた。振りむくと頬ずりしてしまいそうな距離だ。こういうタイプの人はスペースを空けるとさらに侵入してくるので「おえ〜」と思いつつ気にしないようにしていた。気短なご年配と狭い店が多い街だから諦めているが、他人に意味もなく密着されるのがこのご時世本当に辛い。

 

 その老人は、わたしたちの会話を完全に無視し、「いつもやっているのか」と聞いてくる。店主もさるもので、聞こえないふりをしてわたしへの接客を続行してくれる。

 

 老人が再度何かをモゴモゴと尋ねると店主は「えっ、まさか私に話しかけているんですか?」というような返事をしてから、まったくやる気のないトーンで「何曜日はやってますけどもう終わりです」(全然終わりじゃない)と応じた。そしてまた何事もなかったかのように、愛想よくわたしへの接客へと戻る。さすがに諦めたのかその無礼な老人は去って行った。

 

 これまで、この店主に対して「知っている人と知らない人に対して全然態度が違うな〜」と思っていた。人見知りなのかなとも思っていた。そうじゃない。初対面なのに挨拶をしない人、割り込んでくる人や待てない人にものすごく冷たいのだ。話しかけられても気の無い返事をするし、しつこくされても売らない。

 

 商売だから愛想を振りまいておけば買ってくれるんじゃないか、とか、老人に冷たくしたらかわいそうかな、とか、わたしなら思ってしまうのだけれど、違うんだ。子どもだろうと老人だろうと、最低限のルールが守れない人は気持ちよく買い物できないし、そんな人に常連になってもらっても困るからなんだ。そんな人にヘラヘラしなくても、ちゃんと挨拶してやりとりできるお客さんがいるから、食べていけますよってプライドがあるんだな。

 

 人間、つい年長の人、わがままな人を先にしてしまいがちだけど(だって面倒だから)、目の前にいたわたしを優先してくれて素直に嬉しかった。この人の境界ってこういうふうに引くんだな、と勉強になった。また買い物に行くのが楽しみだ。